新制度派経済学(組織の経済学)
新制度派経済学とは?
不確実な環境のもとでの合理的な個人の行動を理論化することを通じて、人々の経済活動を支える社会的規範や法的規則などの制度的側面を解明すべく、経済学の対象と方法を拡張しようとする現代経済学の潮流である。
新制度派経済学はまた「組織の経済学」ともよばれ、取引費用理論、プリンシパル=エージェント理論、所有権理論などの理論を発展させており、これらを用いて、経済諸制度の分析、現実の企業経営、経営組織、経営戦略などの分析や、コーポレート・ガバナンス問題などに応用されている。(新制度派経済学 - Wikipedia)
菊澤研宗研究会 第12期⽣ 三田祭研究論文集 ―新制度派経済学アプローチ―
取引費用(コスト)理論
限定合理的かつ機会主義的な人間同士が取引することになると、相互に自分に有利になるように駆け引きを行うことになるだろう。そして、この駆け引きはさまざまな「無駄」を伴うことにもなる。その無駄を「取引コスト」という。この取引コストを節約するように人間は行動する、というのがウィリアムソンの取引コスト理論である。(ゼロ・ベースで考える 取引コスト理論とダイナミック・ケイパビリティ論)
取引コスト理論とは (慶應義塾大学 商学部 菊澤研宗研究会)
取引費用理論(TCE)①【理解と実践】 - ProgLearn -
取引費用理論(TCE)②【理解と実践】 - ProgLearn -
プリンシパル=エージェント理論
プリンシパル=エージェント理論(principal-agent theory)とは、経済学においては、プリンシパルがエージェンシー・スラックを回避するために、どのようなインセンティブ(誘因)をエージェントに与えれば良いのかについて、主として報酬を対象に考察する研究のこと。また、政治学においては、主として、プリンシパル=エージェント関係にありながらプリンシパルの利益に沿ってエージェントが行動している政治現象を、エージェントに対するインセンティブや監視の形態などから説明するアプローチのこと。(プリンシパル=エージェント理論 - Wikipedia)
プリンシパル=エージェント関係において、エージェントが誠実に職務を遂行しているか否かを逐一監視するには、プリンシパルは多大な労力を払わねばならない。特にプリンシパルが多くのエージェントに多くの業務を委任すれば、十分な監視がより困難になるため、エージェンシー・スラックによる利潤減少やエージェンシー・スラックを防止するための監視コストなどのエージェンシー費用が生じてしまう。また、弁護士や会計士などの専門家に対して専門的な業務を委任する場合は、たとえプリンシパルがエージェントを監視できたとしても、エージェントの行動の適否をプリンシパルが判断するのは非常に困難である。このように、エージェンシー・スラックは情報の非対称性に起因するモラル・ハザードの一種であり、市場の失敗の一例である。(エージェンシー・スラック - Wikipedia)
「エージェンシー理論」はモラルハザードのメカニズムと対処法を考える
プリンシパル・エージェント・モデル(医療政策学×医療経済学)
エージェンシー理論とは (慶應義塾大学 商学部 菊澤研宗研究会)
所有権理論
所有権理論(しょゆうけんりろん)は新制度派経済学の一分野で主に財の発生させるプラス・マイナスの外部性に対して所有権がどのような働きをするかを分析する経済理論である。
人間は自己利益追求のために悪徳的に行動することがあるので、隠れて共有地の資源を浪費したり資源を過剰に利用したりすることがある。その結果として共有地資源は枯れ果て最終的に誰にも得にならない事態になる。
これがコモンズの悲劇と言われる現象である。ゲーム理論の囚人のジレンマといった経済現象にも似ている。このようなコモンズの悲劇を回避するためには所有権を設定する必要がある。(所有権理論 - Wikipedia)
コモンズの悲劇(英: Tragedy of the Commons)とは、多数者が利用できる共有資源が乱獲されることによって資源の枯渇を招いてしまうという経済学における法則。共有地の悲劇ともいう。(コモンズの悲劇 - Wikipedia)
アブナー・グライフ『比較歴史制度分析』
本書は,制度がどのように成立するのかについてゲーム理論の均衡分析をフレームにして考察し,それを中世経済史から検証してきたことで有名なアブナー・グライフによる,これまでの業績を総合した大著である.
これまでさまざまなところでマグレブ商人の閉鎖的な社会とジェノヴァ商人のオープンな社会がそれぞれどうエージェンシー問題に対応してきたかということがリファーされているのを見聞きしてきたが,グライフの論考はその引用元ということになる.( shorebird 進化心理学中心の書評など)
本書は,中世の遠隔地貿易を主な題材としているが,そのことにとどまらず,「制度とは何か,それはなぜ存続し,どのようにして変化するか,またそれを理論的・実証的に分析する方法はなにか」「経済の近代化・発展をもたらすメカニズムはなにか」という壮大な課題に答えようとするものである.このために著者は,伝統的な経済学のみならず,心理経済学,政治学,社会学などの幅広い野で得られた重要な知見を合しようと試みており,本書はそうしたさまざまな分野に興味を持つ読者にも刺激を与えるものとなるであろう.(解説:アブナー・グライフ『比較歴史制度分析』 VCASI)
『ダグラス・ノース 制度原論』
ノースは制度と歴史との関係をどのように捉えたのだろうか。(中略)同書におけるノースの考えでは、制度変化は、「現実の認識→人々の信念の更新→政策や制度の変更→現実の再度の認識」という循環的プロセスとして把握できる。一見して単純な図式に思えるかもしれないが、各要素で何が意味されているのかを深く知ることがポイントである。(滝澤弘和著「現代経済学」P215)
制度はインセンティブ構造を与えることを通じて経済成果に影響するが、ある制度がどんなインセンティブ構造をもたらすかは各社会の信念の体系に依存する。一方、一つの社会に複数の信念が存在する場合、どのメンバーの信念が重要な意味を持つかを制度が決めるという関係がある。信念の時間的な変化は社会的な学習の蓄積過程であるとされている。(ダグラス・ノース 制度原論 書評:東京大学教授 岡崎哲二)
第3章 信念体系、文化、認知科学(私は経済学者です、と言ってみたい)
ミクロ・メゾ・マクロ・ループ
ミクロ・マクロ・ループ(英語: micro-macro loop)は、組織論・会計学・経済学・人工知能論・社会科学方法論の分野などで主題となっているが、分野により意味に異同がある。日本で生まれた概念である。人によってミクロマクロ・ループ、ミクロ・マクロループなど表記にゆれがある。(Wikipedia)
『比較制度分析』
比較制度分析(英: Comparative Institutional Analysis、CIA)とは、同じ資本主義の経済体制であっても、どのような制度配置がその中で成立しているかによって、多様な資本主義があり得るという現実を認め、そうした現実が生成する過程と変化する過程とを、ゲーム理論などのミクロ経済学の手法によって説明する経済学の手法と領域である。(Wikipedia)
制度分析のこれまでとこれから―時代、地域を超えて深まる社会への理解
モジュールの機能・活動をどう相互調整するかにより、3つの基本類型が抽出される。①明示的なインターフェース(接触面)のルールに従いながら、各モジュールが固有の機能を発揮するタイプ②継続的な調整・交渉、擦り合わせを通じて、モジュール相互の活動を連続的に調整していくタイプ③上意下達の方法でモジュールを連結するタイプ ー の3つである。
いうまでもなく、これらは原初的な形態であり、実際の組織やシステムはそれらを様々な形で組み合わせた複雑系として存在する。というのは、 それらは、それぞれに違った条件の下で、比較優位性を持ち得るからである。
比較的に安定した環境の下では、タイプ③が効率的である。比較的穏やかに変化する環境に対しては、タイプ②の擦り合わせ型システムがより良い適応能力を示す。複雑度と不確実度が高い環境の下では、特定の機能をオープンルールにより多重に組み合わせたタイプ①に、より高いパフォーマンスが期待できる。タイプ①とタイプ②の違いは、 それぞれジャスト・イン・ケースとジャスト・イン・タイムにおける強さにあるといえる。(青木昌彦 システム3原型の性能比較)