メカニズム・デザイン(経済学)
メカニズムデザイン (英: mechanism design) とは経済学の一分野である。資源配分や公共的意思決定などの領域で実現したい目標が関数の形で与えられたとき、その目標が自律的/分権的に実現できるようなルール(「メカニズム」とか「ゲームフォーム」とも呼ばれる)を設計することを目指している。(メカニズムデザイン - Wikipedia )
ある環境に存在する人間の集団に対して,集団としての意思決定のメカニズム(制度ルール,プロトコル)を導入すると,何らかの社会的な結果が得られる.このとき,望ましい結果を得るためのメカニズムの設計方法に関する研究が,メカニズムデザインと呼ばれる.従来,ミクロ経済学やゲーム理論の一分野として活発な研究が行われてきた.(ゲーム理論・メカニズムデザインに関する研究動向 岩崎、東藤 2013)
ゲーム理論ではルール(利得や効用の関数)が与えられた上でのプレイヤの行動の帰結(均衛)を分析していた.それに対して,メカニズムデザインでは逆に,社会的に望ましい,もしくは設計者にとって望ましい状態を均衡として実現するようなルールを設計することを目的とする.(メカニズムデザイン(基礎編)横尾 岩崎 櫻井 岡本 2012)
メカニズム・デザインとマーケット・デザインとの違い
ところで、メカニズム・デザインとマーケット・デザインというよく似た言葉が出てきましたが、 この両者には何か違いがあるのでしょうか?
メカニズム・デザインというのは、ごく簡単に言えば、あらかじめ設定された目標に合致するような結果を生み出す配分方式(これをメカニズムといいます)をデザインするという研究分野です。
このとき、社会のメンバー(ゲーム理論に従って、プレーヤーといいます)は、つねに自分の利益になるような形で行動すると想定すれば、他のプレーヤーを出し抜こうと戦略的な駆け引きをしたり、 はたまたメカニズムの裏をかこうとしたりする可能性もあります。
しかし、各プレーヤーが自分の利益を追求する限り、その行動の結果は、デザインされたメカニズムが目標としているような結果に一致するようになってしまう、そのようなメカニズムをデザインすることがメカニズム・デザインの課題です。
このように、あらかじめ何も制度が存在しないところに、新しく制度をデザインすることはもちろんのこと、既存の制度を分析し、より良い制度をデザインし提案することもメカニズム・デザインの研究課題に含まれています。
マーケット・デザインは、このメカニズム・デザインの研究から多くのツールを借用しています。 研究者によっては、マーケット・デザインはメカニズム・デザインの一部分だと考える人もいます。 *1
言い方を変えると、メカニズム・デザインはあくまで理論上うまく機能するメカニズムを研究しているのに対し、マーケット・デザインは現実世界で実際に機能するメカニズムを研究する、工学的な側面があるということです。
そこで、マーケット・デザインでは、不可能性定理があるために理想的な解決ではないものの、現実的にはある程度満足できる範囲でワークするメカニズムを考えることになるのです。 *2
工学としてのマーケット・デザイン
アルヴィン・ロスは、マーケット・デザインの研究とはまさに工学(エンジニアリング)的なものであることを、次のようなたとえ話で語っています。
「吊り橋を設計することを考えてみよう。吊り橋の物理を支配しているニュートン力学は数学的に美しいものである……しかし、こうしたエレガントな理論だけでは吊り橋を作ることはできない。(中略)中には、適切に考慮しておかないと、吊り橋を倒壊させてしまうものがある……こうした追加的な要因がどのようなもので、それが単純な理論モデルにどういった影響をもたらすのかを考える学問領域が工学(エンジニアリング)なのである。工学はニュートン力学のようにエレガントではないが、現実に吊り橋が建造できるのはそのおかげなのである」 *3
自然なメカニズムデザインをめざして 西條辰義 大和毅彦 2005